街とエンターテイメント、というテーマで世界へ想いを馳せると、一番初めに頭に浮かぶのはニューヨークだ。フランク・シナトラとジーン・ケリーがマンハッタンを舞台に歌い踊るミュージカル映画「踊る大紐育」を初め、オードリー・ヘップバーン主演「ティファニーで朝食を」、今まで何度観たか分からない「ゴッドファーザー」、ウッディアレン監督・主演「マンハッタン」、「セックス・アンド・ザ・シティ」「メン・イン・ブラック」、、、。挙げればきりがないのは周知の通りである。またブロードウェイと聞くとニューヨーカーでもなければ、その通り名より演劇やミュージカルのイメージが浮かぶはずだ。もちろん音楽でもマディソンスクエアガーデンやカーネギーホール、アポロシアター、ブルーノート、CBGB (残念ながら既に閉店) などジャンル毎に聖地がある。


そこで、音楽都市・福岡を追求、実現する事をライフワークに日々活動している私は、新たに学びや気づきを得ようとエンターテイメントシティ・ニューヨークへ旅立った。80年代初頭から今まで何度も訪れて来たニューヨーク、しかしここ10年以上仕事の都合もあり、随分久しぶりの再訪となった。以前頻繁に訪れていた時は、正直治安も相当悪かった。地下鉄もストリートも、ましてやクラブやライブハウスでは、暴力事件や発砲事件が日常茶飯事のように起こっていた。あれから9・11のような不幸な出来事も経て、再訪するNYはどう変わったのか。期待と不安を抱きながら降り立ったニューヨーク。

なんとそこは“愛と平和”に満ち溢れていた！

実は着いて早々に、それを実感するハプニングがあった。JFKからタクシーに乗ってホテルへと向かい、いざチェックインしようとしたその時、なんと財布が無くなっていた事に気付いたのだ！どう考えてもタクシーに置き忘れた以外考えられない。実は、車中でドライバーとやり取りする中で、料金が最初に話した額と変わっていたのが気になって、咄嗟にドライバーのIDの写真を撮っていた事を思い出し、ホテルのスタッフにそれを見せて連絡を頼んだ。しかし、予想通りというか、なかなか繋がらずに焦りは増すばかり。日本ならまだしも、ここはニューヨーク。日本でも落とした財布の現金は4割程度しか戻って来ないと言うのに、敢えてもう一度言おう。ここはニューヨークなのだ！とりあえずパスポートは無事だし、カードを止めて現金は諦めるか、などと落ち込みつつも対処策を考えていたら、お願いしていたスタッフから「後10分でホテル前に来ると思う」とまさかのメッセージが！それでもやっぱり来ないかもしれない、と頭を過ぎるが僅かな可能性を信じてすがる思いで待つ。待つ。待つ。

するとどうだ、見覚えのあるイエローキャブがホテルに近づいて来るではないか！そして運転席の窓が開いて、天使のような笑顔 (僕にはそう見えた) のドライバーが「ほら、これかい？」と僕の財布を差し出してくれたのだ。彼の目の前で中身を確認すると、失くした時と何一つ変わらないままの状態がそこにあった。もう嬉しくて嬉しくて、もちろんわざわざ返しに来てくれた手間も含め、少し多めにチップを渡したのは言うまでもない。


Oh! New York!!!と思わず口に出た。これをニューヨークの奇跡と言わずして何と呼ぶだろう。天使のドライバーを社外から何度もハグした。何事も起こらなかった時以上に、僕のテンションはダダ上がり！今回のニューヨーク旅行、最早いい予感しかしない。