マタギキ volume 04 椎木 隆太氏(3/10)
2. 普通では考えられない、あり得ないプロモーション
鷹の爪のTVシリーズ第二弾では、某飲料メーカーさんが番組を突如非提供に決定したことをネタにして動画を配信しました。テレビ放映の際には、わざわざ「某飲料メーカーさんが提供しない」ことを番組の最初と最後の2回、流しましたね。間違いなく世界初です(笑)。これが実現したことは、テレビ局さん、某飲料メーカーさんがすごいと思いますね。両社とも企業としてリスクをとってくれていますよね。テレビ局さんは公共の電波を通じて本当かどうかも分からない情報を流していますし、某飲料メーカーさんはまず、鷹の爪団のファンから「非提供とはなにごとだ」と非難を浴びる可能性もありますよね(笑)
そもそもこの取り組みは、3ヶ月位前から「提供する人探してます」というキャンペーンがあって、1ヶ月位前に某飲料メーカーさんが提供決定という流れができて直前になって非提供になったという、わりと長い道のりを経て煽りを入れていました。ですから視聴者には「某飲料メーカーさんスポンサーついてやってよ」という動きがありましたね。
そもそも、某飲料メーカーさんは「深夜の番組には一切スポンサーしない」という絶対的な方針があって、24:00以降の番組スポンサーは一切しないらしいんです。でも、「我が社の社内ルールをひっくり返してもいい、と思わせるくらいのインパクトがある提案してくれるのであれば考えなくはない」というお言葉を頂きました。僕たちからすると相当な「世界初」「日本初」の提案を持っていかないとマーケティング感度の高い某飲料メーカーさんは落とせないだろう、という覚悟を決め、FROGMANを中心に頭をひねりまくりました。その結果、世界初の非提供コール付きの番組が生まれました。一日でも早くスポンサーになって頂けるように、非提供の某飲料メーカーさんに媚をうる鷹の爪団が12週間にわたって勝手にCMシリーズをつくっちゃいました。まさに勝手感が飛び交った作品でしたね(笑)もちろん、最終的には提供を頂けることとなり、祝提供コールを入れて、めでたく終わりました。
普段ハードディスクレコーダーで番組を録画すると、クライアントさんにとっては悲しいことに、全部CMがスキップされちゃうんですが、僕たちの「TVシリーズ+オリジナルCMシリーズ」が良いのは、同じキャラクターを利用して番組とオリジナルCMをつくると、どっからがCMで、どっからが本編か分からないので、CMをスキップされないんです。それどころか、鷹の爪団のアニメが好きな方にとっては、この毎回違う90秒のCMを見ることも楽しみにしてくれる。CMを見るのが待ち遠しいなんて思ってくれることもなかなか無いことなので、某飲料メーカーさんにもすごく喜んで頂けました。
情報化の中で手間をかけている事と、手を抜いていることはスゴク透けて見える、と僕は思っています。だから僕たちが大事にしていることは、「本当に僕たち自身が楽しんでいる」とか「手間をかけて丁寧に魂を込めてやっている」ということをちゃんと作品に込めれば視聴者にきっと伝わるという考えです。「1回こっきりしか見られないCMなのに、90秒のアニメをわざわざ作っている」ということを、ファンの人は「蛙男商会・DLEならやりかねないでしょう」と楽しんでくれるんですよ。