マタギキ volume 07 松嶋 啓介氏(5/13)
4.ケイズパッションが人気の理由

フランス料理は複雑な味が一皿の中で表現されています。だから、僕はまず料理を素材ごとに分解して、一つずつ考えます。それぞれの味のフェイスが立つように考え、素材の持つ純粋な味を引き出した上で、足し算を行います。味の分かり易さ、伝わり易さを考えています。普通のフランス料理であれば、一つの料理に対して、口の中での味の変化=口内味覚の変化は殆どありません。僕の料理は「和食で刺身を食べる時に、醤油の加減や薬味で都度味が変わる」様に口の中に入れた時にそれぞれの食材が醸し出す味、音楽でいう「ハーモニー」が流れだします。「日本人の食文化=味の繊細さ」を意識しながらつくっていますので、そういった部分が支持されたのだと思います。おそらく僕が初めてやりましたし、それが分かり易かったのだと思います。
僕の料理の基本は相手に「何か驚かせてあげたい」と考えることから始まります。例えば目の前に人参があるとします。まず、自分の頭の中で、生で調理したり、火を通したり、シュミレーションを行って「味の可能性を全て」引っ張りだします。味を決めて、その後に食感を決めて行きます。代表的なメニューに「牛肉のミルフィーユわさび風味」があります。フランス人に「わさびの良さを伝えるためにはどうしたらいいか」と考えて創った料理です。わさびを楽しんでもらう上で、お刺身のように生魚と合わせると「生魚とわさび」という2つの段階を踏まなければいけません。でも、普段食べ慣れている牛肉と合わせることでより親しみ易く、分かり易いのではと考えました。
「ジャパニース」という言葉を創りました。日本を感じながらニースも楽しんで貰いたいという思いを込めています。「土地の食材に自分のアイデンティティを加えてどう表現するか」「日本人が世界有数の力=持つ物の良さを引き出す能力を活かしてニースの食材をどう洗練していくか」という事を心掛けています。