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マタギキ 小森 陽一氏(9/12)

8.被災地の今

会場の様子

 そんな海保・消防・警察など取材で友達になった方々が多く東北関東大震災の現場に入っています。現場から沢山のメールが送られてきます。救助に当たっている方々の中には、自分の家族が被災している人達も大勢います。しかし彼らは、その現場には行かず違う人を救助に行っているんです。テレビでは助けるために被災地の方々の声を聞いています。本当におこがましいとは思いますが、僕は救助に向かっている方々の声を聞くことが自分の使命であり「彼らを救うこと」だと思っています。彼らは仕事だからと片付けられがちですが、彼らにも家族があり恋人がいます。普通の人間ですから、誰かが支えなくてはいけないのです。
 
原子力発電所がある地域の南相馬で救助に当たっている警視庁の友人から送られてきた写真があります。警備犬の写真です。僕が思ったことは、人も頑張っていますが、犬たちも頑張っているということ。犬たちも間違いなく放射線を受けています。そういった人達が現地で戦っているのです。だから僕は、「これ以上酷くならない」と信じています。

 漫画でも描きました「我が名は海師」で取り上げた、サルベージをされている方が宮城県の東松島の野蒜(のびる)という壊滅的な被害を受けたところにいらっしゃいます。ずっと連絡が取れずにいたんですが、ようやく震災の10日後ぐらいに「家族全員生きています」と連絡がきました。彼はあばら骨を折って入院しているのですが、病院の状況を事細かく教えてくれました。病院は野戦病院のようで、沢山の人達が運び込まれています。人が事切れる時は大事な人の名前を呼んで動かなくなるそうです。
彼から託されたものがあります。彼は避難して流されるているときに18枚の写真を撮りました。「この写真を小森さんに託しますので、いつかこの物語を書いて下さい」と堰を切ったように泣きながら言われました。その写真は「命そのもの」です。とても重たいものですが、必ず受け取りに行こうと思っています。

 本当に今、日本は大変なことになっています。こんな時、頼られる人は「余力がある人」だと思います。僕らが一緒に沈むと駄目だと思います。福岡の我々がすべきことは、いつ頼られてもいいように、しっかり食べて、しっかり寝て、きちんと経済活動をして「どんと来い」と構えていないといけないと思います。僕はその経済活動の中で、「物語を書き届けること」が自分のすべきことと考えています。

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