マタギキ 中村貞裕 氏(16/18)
15.中村流仕事術-2 ライフスタイルの大波をつくる

起業して4、5年目に生まれた発想です。それまでは1つのお店をどれだけ“流行らせるか”という視点で取り組んできました。だんだんパターンができてきて、実績ができてくると、僕たちが仕掛けると話題になる=全ての雑誌に取り上げられるようになってきました。その次のステップとして出てきた発想が“ライフスタイルの大波をつくる”ということです。僕たちの会社で言えば、来年オープンするお店は15件あります。再来年は20件ぐらいと、扱う物件数も多くなってきています。さらに大きな視点で見ると、僕たちのようなプロデュースを行っている会社をくっ付けると、もっと大きなトレンドを作ることができると思うんです。僕らはだんだん、ライフスタイルに影響を与えるトレンドを作りたいという発想になっていきました。また周りからも求められるようになってきました。
ファストファッションを例にすると、日本に初めてGAPが来た時には、アメリカからカジュアルアパレルブランドが来たという話題にはなりましたが、ライフスタイルにインパクトを与えるほどの影響力は有りませんでした。H&MやFOREVER21が来て、一つ一つの小さな波であったものがくっついて“ファストファッション”という大波のくくりになりました。トレンドを1つのキーワードでまとめると、大きな力を持ち、ライフスタイルに影響を与える大きな波になります。ファストファッションが僕たちのファッションライフスタイルに与えた影響力を見れば分かり易いのですよね。
ライフスタイルに影響を与える僕らの決め手は、海外にあります。ニューヨーク、パリ、ロサンゼルスといった欧米人をイメージさせる場所のライフスタイルに、日本人は憧れることが否めません。だから、フォトジェニックな欧米のライフスタイルを参考にします。この写真が手に入れることが仕事のスタートでもあります。例えば「パンケーキ」があります。僕らはパンケーキ自体ではなく“朝食文化”を流行らせようと考えました。海外に行くと、朝食が楽しめるんです。ニューヨークで食べる朝食は“カッコいい自分”を感じることができた。そのような感覚を日本でも味わえることができたら良いなと感じて仕掛けました。その時に使ったのが、ニューヨークのビジネス街でブレックファーストミーティングをしている姿であったり、ロサンゼルスでセレブ家族がブランチを楽しんでいる写真でした。
僕たちの仕事は、点ではなく面で開発を行い、色々な人を巻き込んで(他企業クライアントを横断して)ライフスタイルの大波を作り、トレンドを生み出していくこと。だから僕たちの仕掛けは、自分たちのお店だけを宣伝するのではなく、ライフスタイル全部を、それに関わる他のお店も紹介します。逆に大波を作った後で小波を入れる場合もあります。