マタギキ 中村貞裕 氏(15/18)
14.中村流仕事術-1 フェーズで掴む

僕たちはフェーズに分けて取り組みます。僕らに1番求められることは“話題にすること”です。雑誌に載ってラジオで取り上げられ、テレビにどう紹介されるのかが、プロデュースのポイントになります。どんなに儲かっていても、誰も知らない店を作るのではなく、一瞬にして誰でも知っているお店を作ることが使命だと考えています。
第1フェーズは、始めに分かり易いコンセプト=ネーミングを作ります。雑誌に紹介された時を想定して、あわせてキャッチコピーも考えます。この後にコンテンツを作ります。とにかく巻き込むことを考えます。1人でやらずに、既存顧客と既存PRを巻き込むことです。例えば、僕たちの1号店の「OFFICE」は、毎日店長が変わる“日替わり店長”をやっていました。レースクイーンや人気のアパレルショップの店長など、お客さんを持っている女の子が働くことでたくさんの人達がお店を利用します。同じ理由で、ギャラリーやDJなども入っています。要は、僕たちが持っていないコンテンツを巻き込むことで、それぞれのコンテンツが持つファン=お客様を巻き込む(取り込む)ことができます。この手法は、イベントから学びました。伊勢丹でやっていたパーティーも3回目ぐらいからかげりを見せ始めたので、ファッションショーを入れたり、ネイルサロンを入れたり、色々な人達と成功させてきました。自分1人では何もできないんですよ。
コンテンツを決める上でのポイントは、“お店を因数分解すること”です。お店を成り立たせる要因を細かく分けます。カフェであれば、ロゴ・制服・BGM・メニュー・スタッフなどに分けます。ミーティングなどではこれを書き出します。これがコンテンツになります。それからキャスティングを行います。キャスティングと言えば、グラフィックデザイナーや建築家などの人だと思われがちですが、もちろんそれもありますが僕たちは違います。Shopであったりもします。CLASKAであれば、本のコンテンツを入れる際に“ハックネット”、犬のコンテンツ(ペットサロン)を入れる際には一番流行っている「ドックマン」と組みました。キャスティングをする際に心がけることは、既存顧客を巻き込んで行くためにも、今どれだけ“話題のモノを取り入れることができるか”という部分です。だから、この店が流行っている、この人が熱いというような流行をいち早く感じ取る“ミーハー力”が重要になります。
具体的には、人気のお店のメニューをキャスティングしたり、イベント名にしても、今回フリーペーパーの「BOND」さんと組みましたから、僕が福岡でイベントを仕掛ける時にBONDの名前をキャスティングします。要するに具体的に名前があるものをキャスティングして店作りを行います。そうすると“アンテナだらけ”のお店ができ上がります。すると、ありとあらゆる雑誌やメディアに紹介される可能性が残ります。僕たちは、仕掛けの中で世の中に伝えなくてはならない部分を、貪欲に設定し、全てのスタッフで共有します。そうするとハード&ソフトの全ての部分で話題になるようになります。
第2フェーズは、作ったお店のオペレーションに携わることです。オープンしたお店は陳腐化させずに生き生きさせる必要があります。時代に合わせてコンテンツとキャスティング作りはやり続けなければなりません。入れ替えるというより、様々な要素を足していかなければならないと思います。継続することでブランドは育って行きますし、それが出来るのはコンセプトを作っている僕たちだけだと思っていますから。