マタギキ 遠山正道 氏(12/17)
11.やりたいことをやるというビジネスモデル

20世紀は経済の時代、21世紀は文化の時代だと思っています。かつては需要と供給を見た時に、需要が大きい時代がありました。高度経済成長期や、バブル経済の時などがそうです。椅子取りゲームで言えば、人より椅子の方が多い幸せな時代です。だからメーカーさんはどんどんモノを作りました。ところが、21世紀になって需要と供給のバランスが逆転してしまい、今もそんな時代が続いています。最近の人達には当たり前のことになっています。椅子取りゲームで言えば、限られた椅子を皆で奪い合い、勝ってやっと座ったと思っても強制的に音楽が鳴り始めて、次のゲームに参加させられる時代。勝手にモノを作って勝手に余らすなんて、無責任だと思います。
21世紀は足し算引き算のような「経済のめがね」でモノを見るのではなく、文化的価値や生活的価値など、価値そのものに価値がある時代だと思います。きちんと価値を提供できれば、椅子は誰かが“どうぞ座って下さい”といったように自然と持って来てくれると考えています。だから、当たり前にきちんと価値を生み出すことが必要なんです。
やりたいことと、ビジネスのバランスが大事です。どっちかだけでもダメで、上手く両方の円が重なった部分を活かすことです。やりたいことを発信して、それをビジネスで実現させていく。やりたいことが主体であれば、さほど問題ではありません。しかし、ビジネスが目的になってしまうと“なぜやっているのだろう?”みたいな喪失感に襲われます。実績という数字に振り回されて疲れてしまいます。
利益の話をすると、スープストックトーキョーのスープは1杯630円します。となりの牛丼が210円ぐらいですから正直高いです。フードコストもかなりかかっていて、最初の頃は原価率が40%近くありました。ようやく今は3割程度に落ち着いて利益が出るようになりました。製造原価を落として、利益を出すことはいつでもできます。でも、それをやってしまうと自分の信念に背くわけですから“いったい何のためにやっているのだろうか?”と後で確実に自分の首を絞めることになります。
ビジネスのためのビジネスで上手くいって利益を出していれば、それは目的を達成しているかもしれません。しかし、僕たちはビジネスのために仕事をしているのではありません。だから、僕らはビジネスが下手くそです。ぶっちゃけスープストックトーキョーも利益が安定したのは8年目ぐらいです。PASS THE BATONは黒字転換したのは4年目で、giraffeに至っては7年目です。合理的な判断で言えば、それまでに潰れるチャンスはいくらでもありました。でも、そうではなくて「おっしゃる通りなんですが」って言いながら周りを説得したり、泣きついたり、ギリギリで踏ん張って、やりたいからやってきました。その結果、僕たちは気が付けばビジネスになっていた経験しかありません。だから、ダメになった時は“誰がやっていたのか。何でやっていたのか”という考え方になります。その時の“誰が、なぜ、どうして”というモノがないと、本当の意味で話にならないと思っています。ですから、そういった部分が無い事業についてはすぐに「やめよう」って判断をするようにしています。仕事なんてそんなに甘くないですよ。そんな簡単に儲けさせてくれませんし、“根っこの部分=想い”がなければ、成り立つはずがないんです。やりたいことが先行すれば、それをビジネスにすることは、色々な先輩やコンサルタントがいるわけですから、相談したり、本を読んだり、大変ながらも何とかなるんです。“やりたいことありき”でなければ続きませんよ。