マタギキ 中村貞裕 氏(4/18)
3.一匹オオカミとともに育ったトランジット

当時はカフェを4店舗ほど経営しており、伊勢丹の先輩方から「喫茶店がんばってるか」と言われていたので、少しばかり悔しい思いもしていました。当時、僕たちはカフェのプロデュースから始まり、ホテルなど事業の幅も広がっていました。そんな時に、面白い代理店の方と巡り合うことができ、マンションをプロデュースするお話をいただきました。面白いことに、デベロッパーさんや代理店さんなど通常はチームで仕事に取り組むことが多い業種なのですが、僕のところに相談に来る方は一匹オオカミが多いんですね(笑)。
通常だったら、スタバのような大手に依頼する内容を、「僕が見つけてきたトランジットっていう面白い会社があるから、やらせてみようよ」という風に、担当の方がリスクを背負って(失敗するれば左遷覚悟で)まで振ってくれるんです。だから燃えるわけですよ。成功とともにその担当者も出世していくので、一緒に大きくなっていっている感じです。この頃は不動産バブルで、他のマンションなどは、マドンナなどスーパースターを起用した華やかな広告で販売戦略を展開していました。しかし、広告ではなく中身が大切であると考えた僕たちは、他社と比べて二桁ぐらい少ない予算で企画を立てながら、内側(建物の内装や装飾など)に充実した予算を割いて、とにかく“良いもの”を作りました。これがめちゃくちゃあたりまして、その後、共有スペースを充実させマンション作りが流行になりましたね。