マタギキ 米原 康正氏(11/15)
10.米原 康正の感覚・思考-3

僕は「オジサンの商業主義がカルチャーを殺す」と思っています。これは全てのことに通じるのではないでしょうか。渋谷にコギャルたちが出てきて、その後どうなったのか? ネイルを例にとって説明すると分かりやすいと思います。そもそも、ネイルは自分たちでカスタムして楽しむものでした。彼女たちの間で流行すると、チェーン展開するような店舗が出始めました。「どれだけ自分で上手にできたか」ということより「どれだけ安くできたか。○○さんにやってもらったか」というような、お金を使う方向に文化が変えられてしまいました。オジサンたちは「どれだけお金を使うか=使わせるか」という方法論ばかり考えます。特に2000年頃からその傾向が強く、ちょっとした文化の芽が出始めると成熟する前に商業に変える作業が繰り返されてきました。
2005年頃は商業変換が顕著で、原宿・代官山が大きく変わりました。もともと小さなお店が数多く集まり、その雰囲気や好きな音楽や好きな映画が同じ人たちなどが多く集まって文化を形成していました。資本サイドがそういった人たちが集まるという情報を聞くと、「もっと大きな施設を作ればもっと人が集まるじゃないか」という理論で施設を作り、もともとの文化=コミュニティを根こそぎ破壊していきました。ブームとして好きな人たちだけを集める作業を今も繰り返しています。その結果として、東京の街づくりと福岡の街づくりは全く同じで、みんなが同じモノを買って、同じモノを食べる、画一的な世の中になってしまったと思います。だから僕は東京を敢えて「地方都市」と呼んでいます。僕はそんな世の中にしていきたくはありません。絶対、そこには特有の文化があるハズです。僕の活動は、そういった固有のコミュニティに光を当てて育て、今に反抗することだとも思っています。僕が懸念しているのは、文化を世界に向けて発信してきた日本が、今では文化というものがほどんど無くなってきていること。海外から来たものを自分たちの文化だと思い込んでいることが自分たちにとってとても危険な状態に陥っているのではないかと思います。