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第52回 新海誠監督インタビュー。「日常の光景の違った美しさを観た人に提示したい」
日本のみならず、海外でもとても人気の高い新海誠監督の、劇場アニメ最新作「言の葉の庭」がまもなく公開される(5月31日)。靴職人を目指す15歳の男子高校生と、自分の居場所を見失ったしまった27歳の女性の出会いが、梅雨時期の日本の風景とともに描かれる「言の葉の庭」。本原稿執筆時点で、私も2回観たのだが、何度でも観たくなる作品だ。新海監督へのインタビューを2週連続でお送りする。

人と人の微妙な心の機微。「言の葉の庭」では、それが丁寧に描きこまれ、観ている人の心を画面の中に連れていく。
「そうした気持ちを直接描かずに表現することも演出上大切になってきます。言葉では説明できない描写の積み重ねで、登場人物の心を観客に提示していく作業です。『言の葉の庭』でいえば、雪野がケースを落とし、中のファンデーションが割れているといったシーンの積み重ねです。ただ、アニメーションの場合は、役者が演技をする実写と違い、それをたくさんの人に絵として描いてもらわなければいけません。ですので、理屈がないとスタッフにものを頼めません。こうした作業はとても手間がかかることなのですが、そこにこそアニメーションの強さがあるのではないでしょうか」新海監督にとっては、背景の絵ひとつひとつもまさにその繰り返しだ。
「日常の光景の違った美しさを、視点を変えて提示したいと思っています。僕たちはこんなふうに世界を見ていますということを絵として観ているみなさんに伝えたいんです」
「そうした気持ちを直接描かずに表現することも演出上大切になってきます。言葉では説明できない描写の積み重ねで、登場人物の心を観客に提示していく作業です。『言の葉の庭』でいえば、雪野がケースを落とし、中のファンデーションが割れているといったシーンの積み重ねです。ただ、アニメーションの場合は、役者が演技をする実写と違い、それをたくさんの人に絵として描いてもらわなければいけません。ですので、理屈がないとスタッフにものを頼めません。こうした作業はとても手間がかかることなのですが、そこにこそアニメーションの強さがあるのではないでしょうか」新海監督にとっては、背景の絵ひとつひとつもまさにその繰り返しだ。
「日常の光景の違った美しさを、視点を変えて提示したいと思っています。僕たちはこんなふうに世界を見ていますということを絵として観ているみなさんに伝えたいんです」

日本の梅雨って、こんなにも美しい季節だったんだ。それが、私が本作を観た後での大きな感想のひとつだ。まさに萌える緑のなか、主人公二人が心を通わせていくなかで、梅雨の日本がとても美しく観客の前に提示されていく。鬱陶しく語られることが多い梅雨を、かつてこれほど美しく描いた映画が他にあっただろうか。


主人公二人は、雨の降る日の午前中だけ、公園の日本庭園で逢瀬を重ねていく。ラブストーリーを小説ではなく、アニメで描くとはどういうことなのだろうか。村上春樹作品の愛読者でもある新海監督にぶつけてみた。
「まずは敷居の低さがあると思います。絵がすごいかどうかといった判断なら瞬時にできるでしょう。だから世界にも持っていきやすいです。また、小説は読者個人のペースで読むわけですが、アニメは時間軸に沿った演出ができます。効果音やせりふ、動きのタイミング、音楽などを組み合わせて、作り手の時間軸に観客を巻き込むことができるわけです。本作の終盤のシーンなどは、まさにそれを強く意識した演出になっています。ラブストーリーの結末に関しては、結ばれる結ばれないといったこととは違う、観た人に解釈の余地がある、開かれたものにしたいと思っています。そのときよかったで終わらせるのではなく、観てくださった方とコミュニケーションをとりたいし、そここそがラブストーリーを作る醍醐味と思っています。観た方が、二人の関係から生きていく力を引き出すことができれば作り手として嬉しいです」
新海監督のインタビューは、次回後篇に続く。
「まずは敷居の低さがあると思います。絵がすごいかどうかといった判断なら瞬時にできるでしょう。だから世界にも持っていきやすいです。また、小説は読者個人のペースで読むわけですが、アニメは時間軸に沿った演出ができます。効果音やせりふ、動きのタイミング、音楽などを組み合わせて、作り手の時間軸に観客を巻き込むことができるわけです。本作の終盤のシーンなどは、まさにそれを強く意識した演出になっています。ラブストーリーの結末に関しては、結ばれる結ばれないといったこととは違う、観た人に解釈の余地がある、開かれたものにしたいと思っています。そのときよかったで終わらせるのではなく、観てくださった方とコミュニケーションをとりたいし、そここそがラブストーリーを作る醍醐味と思っています。観た方が、二人の関係から生きていく力を引き出すことができれば作り手として嬉しいです」
新海監督のインタビューは、次回後篇に続く。


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執筆者:櫻井孝昌氏プロフィール

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※次回は、新海誠監督へのインタビュー後篇
※次回は、新海誠監督へのインタビュー後篇